そんな彼に、僕はアパートを探しました。
定住している住所がなければ、就職は難しいからです。
現状の収入から考え、家賃3万円以内なら、なんとかなりそうでした。
敷金、礼金、最初払う家賃2か月分(確かそうだった)も考え、家賃は抑えるにこしたことはなく、風呂は銭湯にはいっても平気な人なので、風呂なしのもっと安いとこでもOKでした。
インターネットで調べてもいたら、あるんですよ。1ルームで3万円。風呂付。
紹介している不動産屋さんへいけばもっと安いのを隠してる可能性がある。
「安いのあるから、その不動産屋いってみなよ。」
「香川さん。ほんとにありがとうございます。あさって暇なので、行ってみます。」
それから、何日かたって電話しました。したら「まだ行ってない。」てか、行く気ないみたい。
なんで?困ってたんじゃないの?彼は居候の身で、実は、約束ではもうそろそろでていかなければいけないはずなのです。
実はこれは彼の癖なのです。せっぱつまっているはずなのに、なんとかなるわ、また、先方も許してくれる、と根拠のない安心感であるのです。いや、そうでもないのかもしれませんが、周りにそんな印象をあたえてしまうのです。
僕は心を鬼にせざるをえませんでした。
「いいんですか、家みつからなくても。今いるところもでていかなければいけないんでしょ。」
彼はあせって、翌日、不動産屋行きました。
「香川さん、安いのありました。それで、あと、もう少しまてば、もっと安くなるかもしれないそうなんです。やっぱこういうのって、(直接不動産屋へ)行ってみるもんですねえ。」とはずむような、声。
人のために行動するって大変だ。ときには、相手の軽率な言動にも我慢しなきゃならん。
でも、彼も今までの人生は、よっぽど、不運の連続だったのかもしれません。だから、心のどこかに「どうせ何やってもうまくいかない」と思っているのかも。だから、人前では、わざと、自分はどうなってもいい、てな態度になるのかも。
ところで、その安い家どこにあるかって。それは
言え ません。
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